プレゼミ

今年度から、プレゼミなるシステムが導入された。

ボクは、つねづね、旧国立系の大学とちがい、早稲田の政治経済学部の素晴らしい特徴は、ゼミを2年間やってじっくりと卒業論文を仕上げるところだと思っている。このプレゼミという新しいシステムも、うまく使いこなせば、教育効果をさらに充実させることができるかもしれない。

ただ、率直にいって、プレゼミをどう運営するか、ということについては、かなり迷った。

プレゼミは、ゼミ選考を通った人たちのために、二年次の秋学期の後ろ半分だけに設定され、通常の授業のように、特定の曜日や時間帯に授業をするという形式ではない。多くの先生も、どうしたものか、迷っているらしく、たとえばオンデマンドの授業を聴講させる同僚もいると聞く。

ボクも、一時期、そういう形式で、統計的分析手法を自習させようかと思ったこともあった。しかし、それではあまりに無味乾燥でつまらないし、まったくゼミという環境とはかけはなれているな、と思い返し、違うアイディアを採用することにした。

それは、「メンター制度」。北米の大学には、入ってきた新入生に、それぞれメンターがついて、大学生活のことや授業の内容などについて、自由に相談できるという制度がある。それを応用して、次年度ゼミに入ってくる2年生に対して、ひとりひとり3年生を割り当て、ペアーでいろいろな課題に取り組み、そうした作業を通じて、先輩と後輩の関係を築いていくようにするのが狙いである。

与える課題も、政治学の勉強とは関係のない、この時期にしかできない、つまり卒論研究に入ったら読めなくなるような本や論文を通した知的トレーニングをすることにした。

ちなみに、今年度は、①「日本を考える」、②「思考力を鍛える」、③「詩的・美的感覚を磨く」、④「文章を練る」という4つのテーマを設定して、それぞれ、①水村美苗『日本語が亡びるとき』(筑摩書房2008)、②柄谷行人『日本近代文学の起源』(講談社文芸文庫 2009)、もしくは蓮實重彦『物語批判序説』(中公文庫 1990)、③白洲正子『西行』(新潮文庫 1996)、④村上春樹『羊をめぐる冒険』(講談社文庫2004)、もしくは、東海林さだお『ワニのまるかじり』(新潮文庫 1996)、を読んで、レポートを書かせることにした。

昨日、顔合わせの飲み会の席で、はじめてこうした課題を2年生たちに披露したら、ちょっと戸惑っているようだった。でもね、きっと、思いがけない発見があると思うよ。上にあげたのは全て、ボクがとても影響を受けた文章ばかりなんで、ボクという人間を知る上でも、ね。

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神宮球場のマウンドにのぼった話

イチローが、メジャーのマウンドに登ったことが話題になっているが、実は、ボクは、神宮球場のマウンドに登ったことがある。

もう15年ぐらい前のことである。

ボクは、早稲田に勤める前、青山学院大学で教えていた。で、青学は、東都6大学に属する。東京6大学は、シーズンの一番はじめの試合で始球式があるのみだが、東都の場合は、毎試合始球式があるということである(いまでも、多分そう)。

いったいいつもどんな人が「登板」しているのかきいたら、投げてもホームベースまで届かない、チアリーダーが投げることもある、とのこと。ボクは、それをきいて、正直、若干カチンときた。それは野球というスポーツにたいして失礼ではないか。神宮球場に対する冒涜ではないか。なにより学生がれっきとした大人をさしおいて、大学野球の聖地のマウンドに足を踏み入れるとは、なにごとか、と。

そこで、「そんなら、おれがなげてやろうじゃんか」と、志願することにしたのである。

というわけで、ボクの登板日がきまり、当日まで、若干のキャッチボールなどで練習を重ねる。

そして、その日、ボクは、絶対の自信をもってマウンドに向かったのであります。始球式に登場する他の人はどうだかしらないが、ボクはちゃんと、背番号なしの青学のユニフォームを借りたのであります。ウキウキしながら、ニコニコしながら、「国際政治経済学部助教授の河野勝先生です」というアナウンスをきいたのであります。ベンチには、いまヤクルトで活躍中の石川くんもいて、ボクの投球を見守っていたのであります。

そう、ウキウキ、ニコニコなのであります。

ところが・・・。

そう、ところが、ですね。

そこで予想外なことが起こったんですね。相手チーム日大の一番バッターは、なんと左打者だったのです。ボクの投球練習は、ずっと、右打者を予想して行ってきたものでした。頭をよぎったのは、とにかく、このバッターにあててはいけない、ということでした。これで、バッターにあてようものなら、乱闘になってしまうかもしれないぞと。そしたら、大変だ、明日のスポーツ新聞の一面を飾ってしまうではないか、と。

それで、心と身体のバランスをくずし(おもに心のバランス)、ボクの大事な一球は、大きく外角にはずれたボールとなってしまいました。もちろん、その左バッターは、ちゃんと空振りしてくれました。

若き自分の、ささやかな想い出のお話でした。

ゼミ合宿、ゼミ選考、そしてプレゼミ

前期のゼミ合宿を、9月の終わりに2泊3日で、菅平セミナーハウスで行った。4年生が就活真っ只中だった前期の合宿は、3年生だけで行われたので、これが12期と13期がいっしょになる最初で最後の合宿となった。金曜日は、夕飯のあと、軽く飲み会。土曜日は、午前中体育館で、バレー、バスケ、ドッジボールなどをした。

その午後、4年生たちが、3年生たちのために、業界研究と就活セミナーを開いてくれた。自分たちが就活にまわった業界の状況をレジュメにまとめてくれたほか、インターンシップの意義、業界によって異なる採用の手順、OB訪問や面接の仕方など、本当にことこまかく、ためになるセミナーを用意してくれた。とりわけ、このセミナーを中心的にやってくれた花田くん、ありがとう。この催しは、すでに何年も続いていて、わがゼミのひとつの財産となっているのだが、本当にすばらしいと思う。4年生が、就活を経験して一回りもふた回りも大人として成長して、自信たっぷりに後輩たちにアドバイスをしている姿が、輝いている。そういうプレゼンをすることで、またひとつ自信がつく、という好循環も生んでいると思う。

三日目は、朝からサッカー、ソフト、そしてフリスビー。フリスビーは、今回はじめてやってみたけど、来年からはぜひ正式に、合宿プログラムのひとつとして取り入れたいと思う。そして、今回は、副幹事長の山崎君の「仕切り」が、本当によかった(食事の前の挨拶だけは、短すぎてつまらなかったが)、ありがとう。(最後に寮長さんから、今年度限りで引退するかもしれない、というご挨拶をうけて、ジーンときてしまった。長い間、お世話になりました。)

さて、おりから、来年度にはいってくるゼミ生たちの選考がおわり、15人が河野ゼミ14期として選ばれた。今回は、希望者が21人。かつては40人以上の希望者があったこともあったので、今年は数字の上では「広き門」であったが、しかし一部をのぞいては、希望者のプロフィールがどれも甲乙つけがたい粒ぞろいで、本当に最後まで迷いに迷った。成績がほとんど全優でも合格しなかった人たちが何人かいて、心が痛んだが、この経験も彼女たちにとって人生の糧になる、と祈るばかりである。

あ、そうそう、今年度からは、彼らを対象に、後期にプレゼミを行うことになっています。いま、これをどうやって運営しようか、いろいろ思案中ですが、この前のゼミの会合で、メンター・メンティーシステムをやろう、ということになりました。3年生とペアーになって、共通の課題をしてもらい、勉強の質を向上させるのが狙いです。というわけで、詳細については、またご連絡いたします。